懲りずに言うよ、何度でも




「君、チーズバーガーの方が好きだっけ?」
「アメリカ」
座っていいよといったのにリビングのソファの前に立ち竦んだイギリスに、 どうぞ、と湯気の立ち上るホットミルクを差し出して問うと、何年ぶりだったかその声で名前を呼ばれた。 涙を見せなかったのは殆ど奇跡と言ってもいいんじゃないだろうか、どうにか作り上げた笑顔で手の平にカップを押し付けてやる。
「・・・なんだい? あぁ、やっぱり温めない方がよかった?」
「え、あ・・・」
「でも君、体が冷えてるかと思って」
迷惑だと知っているのに自分はどうしようもなく単純だ、 名前を呼ばれただけで喜びのあまり子供みたいに泣いて縋りたい気持ちになる。
もう子供ではないのに図体ばかり育った大人が何を言うのかと、心の中でどうにか思い留まった。

「そ、そうじゃなくて」
「あぁ、ミルク、少し砂糖を入れ間違えて・・・さすがに子供みたいだったかな」
イギリスの声を聞きたいと逸る思いと、何を言われるのかという恐怖感がぐちゃぐちゃに 掻き乱されて背中を向ける。顔を見ていたいのに、顔を見られるのが怖かった。
「アメリカ!」
今にも泣き出しそうな声で名前を呼ばれた。気がした。 イギリスがカップを置く音がして後ろから腕を掴まれる。触れられるのは、あの時以来だ。
「・・・・うん?」
「た・・・・誕生日、おめでとう」
じわりと、触れられた場所から熱が生まれてずくずくと痛い。 唐突に何を言われるのかと身構えたのに、後半になって聞こえなくなるお祝いを与えられ、 なのにそれを振り返って受け取ったとたんに居心地が悪そうに再び俯いて、顔を赤らめたまま イギリスが視線をさ迷わせる。
「・・・・ありがとう。君から言われると嬉しいな」
待っているのは、与えらるのは、冷たい拒絶だと思っていたから、自然と笑みが漏れていた。

てっきり振り払われると思っていたから、アメリカから与えられた嘘みたいに優しい言葉は 麻薬のように思考回路を縛っていく。 強く握りすぎたと気付いて腕をようやく離したけれど、今度はアメリカに手を掴まれていた。 服の腕周りに痕が残ってしまったのが間近に見えて、しかしそれより目の前にある金髪碧眼に見入ってしまう。
「来てくれないと、思ってた」
「だから、こうして来たじゃねーか・・・」
「うん。君は来てくれたね。ありがとうイギリス」
ああ、ほんと、黙ってれば綺麗だな。前に触れられたのは、いつだったかな。

「・・・誕生日プレゼント、俺で、いいか」




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