懲りずに言うよ、何度でも




「嫌だった?」
イギリスがふるふると首を左右に振ると、ぱたぱたと零れた涙が床を濡らす音。 そっと頬に触れたのはそれと同時だった。
「嫌なら、嫌だって言ってくれよ」
「・・・・・嫌じゃ、ない」
「俺は、最低だ。君の優しさにつけ込むぞ」
「嫌じゃない、て、言ってるだろ・・・ばか!」
素直に喜ぶ事が出来なかったのは、同情かもしれないという不安から。
言葉を返されれば安堵感のままに強くイギリスを抱き締めて、窓の外の星空をようやく視界に入れ、 あの頃は。そんな風に思い起こす。
星空の下、二人並んで絵本を読み聞かせてもらった。紅茶を淹れてくれればミルクを入れてとねだったし、 美味しいと笑ってイギリスの料理を食べた。
だけどそれは過去だ。もう、優しい陽だまりへは戻らせてはくれない。戻れはしない。イギリスを裏切ったあの雨の日から 二度と引き返せぬと分かってしまっていたはずなのに、やはり自分は臆病だ。この腕の中の温もりを手放さない方法ばかり考える。

「好きなんだ、イギリス・・・君が好きだよ」

言わなければならない事は心に溢れるほどあるのに、涙で一つも口をついて出て来なかった。
大人びた顔も随分伸びた背丈も、彼という存在のままそこにある。
痛くてもいい。もっと抱き締めて欲しかった。
背中に手を回していいだろうかと迷っていると、 髪を優しく撫でられる。温もりが往復すると、まるで自分が子供になったみたいだがそれが心地いい。

「泣かないでくれよ。頼むから」
細く長い指がしつこいくらいに頬を拭って、ようやく泣いているのだと気付く。 アメリカの匂いのする服に顔を埋め、今度はしっかりと背中に腕を回した。
「君が笑ってくれれば、それでいいんだよ」
なんだそれ。




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